公益通報・ハラスメントQ&A集

■注釈■
*「指針」:公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針
*「指針の解説」:公益通報者保護法に基づく指針 (令和3年内閣府告示第 118 号)の解説
*「パワハラ指針」:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)
*「セクハラ指針」:「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)
*「マタハラ指針」:「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成28年厚生労働省告示312号)
*「マタハラ指針」:「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成28年厚生労働省告示312号)

公益通報Q&A

フェーズ1 窓口設置

Q : 内部公益通報対応体制を整備・運用することには、どのような意義があるのですか?

A : 法令遵守の推進や組織の自浄作用の向上に寄与し、ステークホルダーや国民からの信頼の獲得にも資するものです。

また、内部公益通報制度を積極的に活用したリスク管理等を通じて、事業者が適切に事業を運営し、充実した商品・サービスを提供することは、事業者の社会的責任を果たすとともに、持続可能な社会の形成に寄与するものでもあります。

Q : 内部公益通報対応業務を行う体制の整備として、何をすれば良いですか?

A : 内部公益通報受付窓口を設置し、当該窓口に寄せられる内部公益通報を受け、調査をし、是正に必要な措置をとる部署及び責任者を明確に定める必要があります。

Q : 社内の各事業部門の中で相談担当者を決めれば、内部公益通報受付窓口を設置したことになりますか?

A : いいえ。個々の事業部門から独立して、特定の部門からだけではなく、全部門またはこれに準ずる複数の部門から受け付ける窓口を設けることが必要です。

 その際に定める「部署及び責任者」とは、内部公益通報受付窓口を経由した内部公益通報に係る公益通報対応業務を管理・統括する部署及び責任者をいいます。

Q : 実際に内部公益通報を受け付けた場合の調査や是正措置の実効性を確保するには、どうしたら良いでしょうか?

A : 例えば、公益通報対応業務の担当部署への調査権限や独立性の付与、必要な人員・予算等の割当等の措置が挙げられます。

Q : 組織の長その他幹部に関係する事案には、どのような措置を講ずればよいでしょうか?

A : 組織の長その他幹部が主導・関与する法令違反行為は、公益通報対応業務が適切に行われない事態を防ぐ必要があります。また、これらの者に関する内部公益通報は、心理的ハードルが特に高いため、独立した内部公益通報対応体制を構築する必要があります。 具体的には、社外取締役や監査機関にも報告を行うようにすること、社外取締役や監査機関からモニタリングを受けながら公益通報対応業務を行うこと、内部公益通報窓口を事業者外部(外部委託先、親会社等)に設置すること等があります。

Q : 内部公益通報受付窓口を設置するに当たり、事業者が定める「従事者」(公益通報者保護法11条1項)とは何ですか?

A : 「従事者」とは、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者のことを言います。  従事者又は従事者であった者は、「正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない」という守秘義務を負い(公益通報者保護法12条)、この守秘義務に反した者は、30万円以下の罰金に処せられます(公益通報者保護法21条)。

Q :内部公益通報として「受け付ける」のは、内部公益通報窓口専用の連絡先に届いたもののみで足りますか?

A : いいえ。内部公益通報受付窓口のものとして表示された連絡先(電話番号、メールアドレス等)に直接内部公益通報がされた場合のほか、例えば、公益通報対応業務に従事する担当者個人のメールアドレス宛てに内部公益通報があった場合等、実質的に同窓口で内部公益通報を受け付けた場合も含みます。

Q :従事者に伝達される「公益通報者を特定させる事項」とは何ですか?

A : 公益通報をした人物が誰であるかを「認識」できる事項を言います。ここでいう「認識」とは、公益通報者を排他的に認識できることを指します。 公益通報者の氏名、社員番号等のように当該人物に固有の事項を伝達される場合が典型例です。その他にも、性別等の一般的な属性であっても、当該属性と他の事項とを照合させることにより、排他的に特定の人物が公益通報者であると判断できる場合には該当します。

Q :「従事者」は、どのようにして定めたら良いでしょうか?

A : 事業者は、書面により従事者を指定する等、従事者の地位に就くことが、従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければなりません。

なぜなら、従事者は、公益通報者を特定させる事項について刑事罰により担保された守秘義務を負う者(公益通報者保護法12条)ですので、公益通報者を特定させる事項に関して慎重に取り扱い、予期に反して刑事罰が科される事態を防ぐため、自らが刑事罰で担保された守秘義務を負う立場にあることを明確に認識している必要があるからです。

Q :公益通報の業務に少しでも関わっている人は、「従事者」として扱われるのでしょうか?

A : いいえ。公益通報の受付、調査、是正に必要な措置を主体的に行っておらず、かつ、重要部分に関与していない者は、「公益通報対応業務」を行っていることにならず、従事者として定める対象には該当しません。

例えば、社内調査等でのヒアリングの対象者、職場環境を改善する措置に職場内に参加する労働者等、製造物の品質不正事案に関する社内調査において品質の再検査を行う者等であって、公益通報の内容を伝えられたにとどまる者等は、公益通報の受付、調査、是正に必要な措置について主体的に行っていません。その上、重要部分に関与していないので、たとえ調査上の必要性に応じて公益通報者を特定させる事項を伝達されたとしても、従事者として定めるべき対象には該当しません。 もっとも、この場合でも、事業者の労働者等及び役員として、内部規程に基づき、範囲外共有(公益通報者を特定させる事項を必要最小限の範囲を超えて共有すること)をしてはならない義務を負いますので、注意は必要です。

Q :内部公益通報受付窓口は、事業者内の部署に設置する必要がありますか?

A : 事業者外部(外部委託先、親会社等)に設置することや、事業者の内部と外部の双方に設置することも可能です。

前述のとおり、従事者には守秘義務も課されます。内部で体制を全て整えるには、悩ましい点も数多く出てきますので、外部に委託するメリットは大きいといえます。

Q :子会社や関連会社が多数ある場合に、共通の窓口を設置することは可能ですか?

A : 企業グループ本社等において、子会社や関連会社の労働者等及び役員並びに退職者からの通報を受け付ける企業グループ共通の窓口を設置することは可能です。その際には、共通の窓口設置について、子会社や関連会社自身の内部規程等にあらかじめ定めることが必要です(公益通報者保護法2条1項柱書参照)。

また、共通の窓口を設けた場合でも、当該窓口を経由した公益通報対応業務に関する子会社や関連会社の責任者は、子会社や関連会社自身で明確に定めなければなりません。

フェーズ2 相談対応

Q :匿名の通報には、応じる必要がありますか?

A : 応じる必要があります。公益通報者保護法は対象となる通報を実名の通報に限定しておらず、匿名の通報であっても、公益通報者保護法に定める要件を満たせば「公益通報」に該当します。指針の解説では、匿名の通報を受け付けることが必要であるとしています。

Q :匿名の通報を受けたときに、通報者とどのように連絡を取ればいいでしょうか?

A : 匿名の通報では、通報者に連絡がつかないために十分な調査ができないなど、実名に基づく通報と同様の対応を行うことが難しい場合も考えられます。

もっとも、指針の解説では、匿名の公益通報者との連絡をとる方法として、受け付けた際に個人が特定できないメールアドレスを利用して連絡するよう伝える、匿名での連絡を可能とする仕組み(外部窓口から事業者に公益通報者の氏名等を伝えない仕組み、チャット等の専用のシステム等)を導入する等の方法が提示されています。

Q :匿名の通報を受けたときに、留意すべき点はありますか?

A : 指針では、通報者に対しての是正結果等の通知やフォローアップを行うことを原則としています。匿名の通報では、通報者がフィードバックを望まない場合やそれを行うことが困難な場合もあるため、実名での通報とは異なる取扱いとすることも考えられます。 匿名の通報に対応する場合、匿名であっても、調査の際の対応によって通報者が特定されるおそれがあります。そのため、調査の実施では、当該調査が通報を契機とすることを秘匿する等、十分に配慮をすることが必要です。

Q :退職者からの通報にはどのように対応すればよいのでしょうか?

A : 事業者への通報が内部公益通報となり得る退職者は、当該通報の日前1年以内に退職した労働者等に限られます(公益通報者保護法第2条1項)。他方で、事業者は、コンプライアンス経営を推進し、経営上のリスクに係る情報の早期把握の機会を拡充するため、公益通報者保護法の対象外となる通報にも、適切に対応することが重要です。指針の解説でも、通報窓口の利用者の範囲は、通報の日から1年より前に退職した労働者等を含め幅広く設定することが望ましいとされています。

Q :会社のルールに違反する行為(就業規則違反など)について通報がなされた場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

A : 公益通報者保護法では、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に定められた法律(及びこれに基づく命令)に違反する行為のうち、犯罪行為・過料の対象となる行為又は最終的にこれらにつながる法令違反行為の事実について通報を行った場合を、保護の対象としています。そのため、単なる会社のルールに違反する行為(就業規則違反など)は、公益通報者保護法の対象となりません。他方で、事業者は、コンプライアンス経営を推進するとともに、経営上のリスクに係る情報の早期把握の機会を拡充するため、公益通報者保護法の対象外となる通報に関しても、適切に対応することが重要です。指針の解説でも、通報対象となる事項の範囲は、法令違反のほか、内部規程違反等を含め幅広く設定することが望ましいとされています。

Q :ハラスメント被害の申告が公益通報窓口にあった場合、受け付けなくても構いませんか?

A : ハラスメント加害者が被害者に対し単なる民事上の賠償義務を負うにとどまる場合は、公益通報者保護法による保護の対象外となります。他方、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪、恐喝罪、強制わいせつ罪等の刑法上の犯罪が成立する場合には、公益通報者保護法による保護の対象となります。  そのため、ハラスメント事案であることのみで、公益通報窓口での相談を受け付けないとの対応は相当でなく、特に通報の初期段階では、幅広く相談を受け付けることが必要です。

Q :ハラスメント窓口を設けている場合も、ハラスメント被害を公益通報窓口で扱わなくてはならないのでしょうか?

A : 公益通報窓口とは別に、ハラスメント窓口を別途設けている場合、ハラスメント窓口による対応が適切である事案も想定されるため、通報者の意向にも配慮しつつ、ハラスメント窓口と連携した対応を採ることも考えられます。

Q :ハラスメント被害を公益通報窓口で受け付けた場合、留意すべき点はありますか?

A : 被害者を特定させる事項を加害者や関係者と共有しなければ、ハラスメントの調査を実効的に行うことが困難である点に留意する必要があります。指針の解説では、特に、ハラスメント事案等で被害者と公益通報者が同一の事案では、公益通報者を特定させる事項を共有する際に、被害者の心情にも配慮しつつ、例えば、書面による等、同意の有無について誤解のないよう、当該公益通報者から同意を得ることが望ましいとされています。

Q :通報者が、公益通報したことを理由に不利益な取扱いを受けるのではないかと心配している場合、どのようなアドバイスが必要となりますか?

A : 事業者は、通報者が公益通報したことを理由として、当該通報者に対して解雇、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはなりません(公益通報者保護法3条、5条)。また、事業者は、公益通報によって損害を受けたことを理由として、通報者に対して損害賠償を請求することはできません(公益通報者保護法7条)。

 このように、公益通報者保護法によって通報者が保護されていることを説明し、不利益取扱いへの通報者の不安を解消することが必要です。万が一不利益取扱いを受けた場合には、内部公益通報受付窓口等の担当部署に連絡するよう通報者にあらかじめ伝えておくことも必要です。

フェーズ3 調査対応

Q :会社の受付窓口が、違法行為の相談(内部公益通報)を受け付けた場合は、調査をしなければならないのでしょうか?

A : 内部公益通報窓口で、内部公益通報を受け付けた場合、事業者は、正当な理由がある場合を除き、必要な調査を実施することとなります。 調査を実施しない「正当な理由」がある場合の例として、指針の解説では、解決済みの案件に関する情報が寄せられた場合や、通報者と連絡が取れず事実確認が困難である場合等が挙げられています。もっとも、解決しているか否かの判断は、可能な限り客観的に判断することが求められており、案件自体が再発する場合もあるため、その判断は慎重にしなければなりません。

Q :公益通報者が調査を希望しない場合でも、調査を行わなければならないのでしょうか?

A : 指針の解説では、公益通報者の意向に反して調査を行うことが原則可能とされています。もっとも、この場合、調査の前後に通報者とのコミュニケーションを十分にとるよう努め、プライバシー等の侵害がないように配慮する必要があります。

Q :公益通報に係る事案の関係者が、公益通報の業務に関わっている場合は、どうしたらよいでしょうか?

A : 指針では、事業者は、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとることとなっています。受付当初は「事案に関係する者」か否かが判明しない場合でも、その後、判明した段階で、調査や是正に必要な措置の担当から外すことが必要です。ただし、指針の解説では、「事案に関係する者」であっても、公正さが確保できる部署のモニタリングを受けながら対応をするなど、実質的に公正な公益通報対応業務の実施を阻害しない措置がとられている場合には、その関与を妨げるものではないとされています。

Q :公益通報を受けて調査を実施する場合に気を付けることはありますか?

A : 事業者は、通報事案の範囲外共有を防ぐための措置や、通報者の探索を行うことを防ぐ措置をとることが必要になります。

また、特にハラスメント事案等で被害者と公益通報者が同一の場合には、関係事項の共有に当たっては、被害者の心情に配慮して、書面等により同意を得ることが望ましいです。

Q :通報事案の範囲外共有を防ぐための措置として、どのようなことが必要でしょうか?

A : 指針の解説では、以下のような例が挙げられております。

①通報事案の記録等を閲覧・共有できる者を必要最小限に限定し、その範囲を明確にする

②通報事案に関する記録等は施錠管理する

③専用の電話番号やメールアドレスを設ける

④通報者との面談は勤務時間外に個室や事業所外で行う

⑤公益通報に関する記録の保管方法やアクセス権限等を規程において明確にする

⑥公益通報者を特定させる事項の秘匿性に関する社内教育を実施する

Q :通報者の探索を行うことを防ぐ措置としては、どのようなことが必要でしょうか?

A : 指針の解説では、以下のような例が挙げられております。

①探索行為が懲戒処分やその他の措置の対象となることを定め、その旨を教育・周知する

②公益通報者を特定させる事項を伝達する際に予め秘密保持を誓約させる

③従事者以外の者に調査の依頼を行う際に、当該調査が公益通報を契機とすることを伝えないようにする

フェーズ4 調査終了後の企業対応

Q :調査終了後にはどのようなことをすればいいですか?

A : 調査の結果、違法行為が確認された場合には、是正措置をとる必要があります。また、違法行為が確認された場合はもちろん、されなかった場合にも、通報者に速やかに顛末を通知すべきです。違法行為の内容によっては、監督官庁に報告したり、社会に公表・情報提供をしたりする必要があることもあります。

Q :違法行為の是正措置とは、どのようなことですか?

A : まず、確認された違法行為(対象事実)を直ちに中止する必要があります。そのうえで、再発防止のための対策を打つ必要があります。

Q :再発防止のための対策とは、どのようなことが考えられますか?

A : まず、違法行為の原因を検討することが必要です。特定の労働者や役員の行為に原因がある場合には、その労働者への懲戒処分、その役員の解任のほか、その労働者や役員を違法行為を生じさせた部署から異動させることも考えられます。組織的な問題がある場合には、より根本的な対策が必要になります。

Q :通報者への顛末の通知において、注意することはありますか。

A : 通報者に対しては、是正に必要な措置をとったときはその旨、通報対象事実がないときはその旨を、それぞれ通知します。通知の方法は、例えば、公益通報者個人に通知をする、全社的な再発防止策をとる必要がある場合に労働者等及び役員全員に対応状況の概要を定期的に伝える等、状況に応じた様々な方法が考えられます。また、通知をする際には、適正な業務の遂行及び利害関係人の秘密、信用、名誉、プライバシー等の保護に支障がない範囲で行うことが必要ですが、他方で、これらに注意するあまり、対応結果が分からない通知にならないよう気をつけなければなりません。

Q :通報者に対して、いつまでに顛末の通知を行う必要がありますか?

A : 調査の内容にもよるため、一律にいつまでに通知を行わなければいけない、との定めはありません。しかし、通報者としては、勇気をもって通報したにもかかわらず、事業者が迅速な対応を行っていないのではないか、との疑念を持つ場合もあります。そのため、事業者は調査のスケジュールや顛末を通知するまでの目安となる期間を示すことが望ましいです。

また、公益通報者保護法3条3号ホでは、書面により内部公益通報をした日から20日を経過しても、事業者から通報対象事実について調査を行う旨の通知がない場合には、報道機関等への外部通報を行った者は、解雇その他の不利益な取扱いからの保護の対象となります。そのため、当該規定を根拠とする外部通報を防止する観点から、受付から20日以内に、最低限、調査開始の有無は伝える必要があります。

Q :公益通報したことを理由として、通報者に対して不利益な取扱いが行われたことを把握した場合には、どのような措置が必要となりますか?

A : 公益通報したことを理由とする不利益取扱いは禁止されますが(公益通報者保護法3条、5条)、万が一不利益取扱いが発覚した場合には、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとることが求められます。

Q :公益通報に関する記録の保管について、留意すべき点はありますか?

A : 記録の保管期間については、個々の事業者が、評価点検や個別案件処理の必要性等を検討した上で適切な期間を定めることが求められています。記録には公益通報者を特定させる事項等の機微な情報が記載されることを踏まえ、例えば、文書記録の閲覧やデータへのアクセスに制限を付すなど、慎重に保管する必要があります。

ハラスメントQ&A

総論・各種ハラスメントについて

Q :パワハラとは何ですか?

A : パワハラは、労働施策総合推進法30条の2第1項に定めがあります。ここには、パワハラとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものと定められています。

Q :パワハラの典型例は何ですか?

A : パワハラ指針には、以下の6つが挙げられています。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)

②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

Q :セクハラとは何ですか?

A : セクハラは、男女雇用機会均等法11条1項に定めがあります。この規定と指針から、セクハラとは、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(「対価型」)と、当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(「環境型」)の2種類に分類されます。

Q :典型的なセクハラの例は何ですか?

A : セクハラ指針によれば、以下の例が挙げられています。

(対価型の典型的な例)

① 事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該労働者を解雇すること。

② 出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること。

③ 営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格すること。

(環境型の典型的な例)

① 事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。

② 同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。

③ 労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。

Q :マタハラとは何ですか?

A : マタハラ(職場における妊娠、出産等に関するハラスメント)は、男女雇用機会均等法11条の3第1項に定めがあります。この規定と指針によれば、マタハラとは、上司又は同僚から行われる、①女性労働者の妊娠又は出産に関する制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの(「制度等の利用への嫌がらせ型」)と、②女性労働者の妊娠又は出産に関する言動により就業環境が害されるもの(「状態への嫌がらせ型」)に分類されます。

Q :マタハラの典型的な例は何ですか?

A : マタハラ指針では、以下のような例が挙げられています。

(制度等への利用の嫌がらせ型)

①女性労働者が、産前休業や軽易業務への転換などの制度を利用したいと上司に相談したところ、上司が当該女性労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いを示唆することや当該請求をしないように言うこと。

②女性労働者が、産前休業や軽易業務への転換などの制度を利用したことによって、上司が当該女性労働者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動、業務に従事させないこと又は専ら雑務に従事させること)をすること。

(状態への嫌がらせ型)

女性労働者が妊娠や出産したことによって、上司が当該女性労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いを示唆することや、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすること。

Q :ケアハラとは何ですか?

A : ケアハラ(職場における育児休業等に関するハラスメント)は、育児介護休業法25条1項に定めがあります。この規定と指針から、ケアハラとは、上司又は同僚から行われる、労働者の育児休業や介護休業等の制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるもの(「制度等の利用への嫌がらせ型」)と定義されます。

Q :ケアハラの典型的な例は何ですか?

A : ケアハラ指針では、以下のような例が挙げられています。

(制度等の利用への嫌がらせ型)

①労働者が、育児休業や介護休業などの制度を利用したいと上司に相談したところ、上司が当該労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いを示唆することや当該請求をしないように言うこと。

②労働者が、育児休業や介護休業などの制度を利用したことによって、上司が当該労働者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動、業務に従事させないこと又は専ら雑務に従事させること)をすること。

Q :事業主がハラスメント対策を行うことは、法律上の義務なのでしょうか?

A : 事業主は、ハラスメントについて、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。

これは法律上の義務となっています。パワハラについては労働施策総合推進法30条の2第1項、セクハラについては男女雇用機会均等法11条1項、マタハラについては男女雇用機会均等法11条の3第1項、ケアハラについては育児介護休業法25条1項にそれぞれ定めがあります。

Q :ハラスメントを防止するために、事業主が講じなければならない措置はどのようなものがありますか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の措置を講じることが定められております。

⑴ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

⑵ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

⑶ 職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

⑷ ⑴から⑶までの措置と併せて講ずべき措置

(マタハラ・ケアハラについては、⑴~⑷に加えて、マタハラ・ケアハラの原因や背景となる要因を解消するための措置も求められている)

Q :マタハラ・ケアハラの原因や背景となる要因を解消するための措置とは、具体的にどのようなことが求められていますか?

A : マタハラ指針・ケアハラ指針によれば、業務体制の整備など必要な措置を講じなければならないとされ、具体例として、周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うことや、業務の点検を行い、業務の効率化等を行うことが挙げられています。

Q :ハラスメント窓口は、ハラスメントごとに設けるべきでしょうか?

A : 各種ハラスメント指針によれば、パワハラ、セクハラ、マタハラ、ケアハラなどの各種ハラスメントは、複合的に生じることも想定されるため、事業主は、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましいとされています。

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

Q :「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」とは、どのようなことをすればよいのでしょうか?

A : 各種ハラスメント指針によれば、以下の措置を講じることが規定されています。

① 職場におけるハラスメントの内容(マタハラ・ケアハラについては、ハラスメントの背景等も含む)及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

② 職場におけるハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

Q :事業主の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例には、どのようなものがありますか?

A : 各種ハラスメント指針には、以下の例が挙げられています。

・就業規則等に事業主の方針を規定して、労働者に周知・啓発すること

・社内報、パンフレット、社内ホームページなどを配布すること ・研修・講習等を実施すること

Q :対処方針を定め、管理監督者を含む労働者に周知・啓発していると認められる例には、どのようなものがありますか?

A : 各種ハラスメント指針には、以下の例が挙げられています。

・就業規則等にハラスメントに関する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること

・ハラスメントを行った者は懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること

相談体制の整備

Q :「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」とは、どのようなことをすればよいのでしょうか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の措置を講じることとされています。

① 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。

② 相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

Q :相談窓口をあらかじめ定めていると認められるものには、どのようなものがありますか?

A : 各種ハラスメント指針によれば、以下の例が挙げられます。

・相談に対応する担当者をあらかじめ定めること

・相談に対応するための制度を設けること

・外部の機関に相談への対応を委託すること

Q :相談窓口の担当者が適切に対応できるようにしていると認められるものとして、どのようなものがありますか?

A : 各種ハラスメント指針によれば、以下の例が挙げられています。

・相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること

・あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること ・相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと

Q :ハラスメントの相談を受けた際、どのような姿勢で臨むべきですか?

A : 相談者の訴えたいことを自由に話してもらい、時間をかけて丁寧に聴くことが重要です。

まず、相談者へ秘密の保持や相談によって不利益な取り扱いがないこと、本人の意思や希望を尊重することを伝えると良いでしょう。

Q :ハラスメントの相談を受けた際の一般的な相談対応はどのようなものですか?

A : 次の項目に沿って、これも本人の了解を得て記録を取りながら聴いていきます。

①行為者はだれか、相談者との関係

②問題行為がいつ、どこで、どのように行われ、相談者はどのように感じ、対応したか。

③行為者は他の人に対しても同様の行為はあるか。

④誰かに相談したか。

⑤問題行為の現在の状況と相談者の心身の状況

⑥どのような解決を望むのか。

Q :ハラスメントの相談内容を聞き取った後、気を付けることはありますか?

A : 相談の終了に当たっては、担当者は必ず、相談内容や相談者の意向など聞き取ったことを記録をもとに相談者に確認し、認識のずれがないようにします。相談者の意向を踏まえた解決方法やこれからの手順、当面の対処の仕方などを説明します。

*厚生労働省「あかるい職場応援団」のホームページには、相談受付票のサンプルも掲載されていますので、参考になります。

Q :ハラスメントが現実に生じていない場合や、ハラスメントに該当するか否かが判断しにくい場合は、どのように対応すればよいでしょうか?

A : 各種ハラスメント指針によれば、相談窓口では、被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うことが求められています。

例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題が原因や背景となってパワハラが生じるおそれがある場合、性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクハラが生じるおそれがある場合、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関する否定的な言動が原因や背景となってマタハラやケアハラが生じるおそれがある場合等が指摘されております。

Q :セクハラの相談を受けた際に、留意すべき点はありますか?

A : 「性的な言動」は、年代、性別、価値観によって感じ方はそれぞれであるため、相談担当者が、「そのような言動くらいでは、セクハラに当たらない」などと勝手に判断するのではなく、事実関係を丁寧に聴取した上で、相談者に寄り添った対応が求められます。

特に、セクハラの相談の場合には、二次被害(相談担当者の言動によってさらに被害を受けること)の防止を徹底することが必要です。

Q :パワハラの相談を受けた際に、留意すべき点はありますか?

A : 業務指導の範囲を超えている場合(身体への暴力や、「お前が生まれてきたのは間違いだ」などと人格否定の言動を行うなど)や、業務指導とはいえ明らかにやりすぎな場合(長時間立たせて説教する、就業規則の書き写しをさせるなど)はパワハラに該当することは明白ですが、実際の相談の多くは、パワハラに該当するか否か微妙な事案が多いと思われます。

相談担当者は、パワハラに該当するか否かの判断が難しいことを前提に、「そのような言動くらいでは、パワハラに当たらない」などと勝手に判断するのではなく、事実関係を丁寧に聴取した上で、相談者に寄り添った対応が求められます。

Q :マタハラ・ケアハラの相談を受けた際に、留意すべき点はどのようなことですか?

A : マタハラ指針・ケアハラ指針では、事業主は、マタハラ・ケアハラの原因や背景となる要因を解消するため、労働者も、産前休業・育児休業・介護休業等の制度の利用ができるとの知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調や制度の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していく意識を持つこと等を、労働者に周知・啓発することが望ましいとされています。具体的には、これらを記載した社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等を配布することや、人事部門等から制度等の利用の対象となる労働者に周知・啓発することが挙げられています。

一方で、マタハラやケアハラとして実際に寄せされる相談では、前提となる制度等の正確な理解を欠いていることが原因である場合も想定されます。そのため、相談担当者は、産前休業・育児休業・介護休業等の制度について習熟し、相談者に対して制度の内容を正確に説明できるようにすることが必要です。

事後の迅速かつ適切な対応

Q :「職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」とは、どのようなことをすればよいのでしょうか?

A : 各種ハラスメント指針によれば、以下の措置を講じることが必要とされています。

① 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

② ①により、職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。

③ ①により、職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。

④ 改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。

Q :事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するために、どのようなことが必要ですか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の例が挙げられています。

・相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。

・相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。

・事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、調停その他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること

Q :被害者に対する配慮のための措置を適正に行うために、どのようなことが必要ですか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の例が挙げられています。

・被害者と行為者の間の関係改善に向けた援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置(マタハラ・ケアハラについては、職場環境の改善や育児休業・介護休業等の制度の利用に向けての環境整備を含む)を講ずること

・調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること

Q :行為者に対する措置を適正に行うために、どのようなことが必要ですか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の例が挙げられています。

・ハラスメントに関する規定に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、被害者と行為者の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。

・調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。

Q :再発防止に向けた措置とは、どのようなものがありますか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の例が挙げられております。

・ハラスメントを行ってはならない旨の方針及びハラスメントを行った者について厳正に対処する方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等に改めて掲載し、配布等すること。

・ハラスメントに関する意識を啓発するための研修・講習等を改めて実施すること

併せて講ずべき措置

Q :「併せて講ずべき措置」とは、どのようなことをすればよいのでしょうか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の措置を講じることが必要とされています。

① 職場におけるハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するため、相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応では、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。

② 労働者が職場におけるハラスメントに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

Q :プライバシーを保護するために必要な措置とは、どのようなものでしょうか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の例が挙げられています。

・プライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。

・プライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。

・プライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等に掲載し、配布等すること。

Q :不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例としては、どのようなものがありますか?

A : 各種ハラスメント指針では、以下の例が挙げられています。

・就業規則などにおいて、ハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。

・社内報、パンフレット、社内ホームページ等に、ハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。